こんにちは、せーじんです。
過去2回の記事で、債券投資の魅力と特徴についてお伝えしました。
- 株価と逆に相関する動きをするため、株価暴落時にも資産を守る保険として利用できる
- 債券を大きく分けると、株価と逆に動く「国債」、ある程度株価と連動する「社債」がある
- 満期までの期間が短い短期債は値動きが小さく、期間が長い長期債は大きな値動きをする
投資する債券によってリスクや利回りに大きな違いが出ます。
債券ETFを比較する記事の中で、長期米国債は株価が下落したときに大きく上がるという性格を持つことが判明しました。
これは、株式のリスクヘッジ先として最適ですね!
長期米国債にはいくつかのETFがあるので、チャートを見ながらその利回りを比較していきましょう。
過去2回の記事はこちらです。合わせてご覧ください
長期米国債のETFをピックアップしましょう
長期米国債のETFは、大手運用会社3社から5銘柄が設定されています。
その中でも、バンガードからは長期、超長期と2つ設定されています。
日本市場に上場している米長期国債ETFもあるんですよ!
- iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)
- バンガード・超長期米国債ETF(EDV)
- バンガード・長期米国債ETF(VGLT)
- SPDR®ポートフォリオ米国長期国債ETF(SPTL)
- iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)(2621)
ティッカー | TLT | EDV | VGLT | SPTL | 2621 |
---|---|---|---|---|---|
運用会社 | ブラックロック | バンガード | バンガード | ステートストリート | ブラックロック |
設定日 | 2002.7.22 | 2007.12.6 | 2009.11.19 | 2007.05.23 | 2020.10.14 |
総資産 | 175.2億ドル | 12.4 億ドル | 24.1 億ドル | 39.3億ドル | 68.2億円 |
分配金 | 1.53% | 1.99% | 1.90% | 1.72% | 1.17% (1.56%) |
分配月 | 毎月 | 年4回 | 毎月 | 毎月 | 年4回 |
経費 | 0.15% | 0.07% | 0.05% | 0.06% | 0.14% |
デュレーション | 19.24年 | 24.9年 | 18.1年 | 18.83年 | 19.22年 |
- 2621の分配金のカッコ内は、1年間の想定分配率です
デュレーションとは、金利の変動に影響される値動きの幅
表の一番下にある、「デュレーション」て何?
わかりやすく言えば、値動きの幅の大きさを表しているよ
ボラティリティみたいなもの?
とりあえず、そう考えておくとわかりやすいね
正確に言えば、デュレーションの意味するところは、債券の満期までの期間のことです。
満期までの期間が長いほど金利の変動から受ける影響が大きくなるので、値動きの幅を示す指標になるわけです。
デュレーションの最も大きいEDVと、もっとも小さいVGLTの値動きを比較してみましょう。
金利が1%上昇した時と、1%下落した時の値動きはこうなるよ
銘柄 | EDV | VGLT |
---|---|---|
デュレーション | 24.9年 | 18.1年 |
金利 +1% | ▲24.9% | ▲18.1% |
金利 ▲1% | +24.9% | +18.1% |
デュレーションが大きいほど、上にも下にも大きく動くのね
デュレーションから想定できる各ETFの値動きの幅は、
- 値動き大・・・EDV(24.9年)
- 値動き中・・・TLT、2621(19年程度)
- 値動き小・・・VGLT、SPTL(18年程度)
EDVは、他の4銘柄よりも大きな値動きをすることが想定できますね。
一方、残りの4銘柄はTLTと2621がやや大きく動きますが、明確な違いはない程度になりそうです。
分配金は毎月分配が多い
配当頻度を確認しましょう。
分配金は毎月配当が多いですね。
リスクヘッジだけでなく、キャッシュフロー強化にも役立ちそうです。
毎月分配金がもらえるなんて、嬉しいね
分配利回りは1.5〜2%、分配金の率が高いわけじゃないからね
この表の分配金は、このように計算しています。
直近1年間に支払われた分配金の合計 ÷ 現在の株価
2621は運用開始から日が浅く、3度(2021年1月、4月、7月)しか分配実績がありません。
このため単純計算すると非常に低い数値になってしまいます。
これでは他のETFと比較ができないので、今後同じ額の配当が出ると仮定して計算したのがカッコ内の数字です。
すると、2621の分配金率は1.56%となります。
総資産が飛び抜けて大きいTLT、成長著しい2621
総資産はETFの人気のバロメーターとして、非常に重要な項目ですね。
ティッカー | 総資産 |
---|---|
TLT | 175.2億ドル |
EDV | 12.4 億ドル |
VGLT | 24.1 億ドル |
SPTL | 39.3億ドル |
2621 | 68.2億円(0.62億ドル程度) |
米長期国債ETFの中では、設定からの歴史が長いTLTの資産が最も多いですね。
TLTの総資産は、2位のSPTLの4倍以上!
2621はすごく少ないんだねえ
ですが、当記事を初稿した2020年11月時点から、改稿時点の2021年6月まででTLTやEDVの資産はわずかに増加しているのみです。
そんな中、2621は資産を大きく伸ばしています。
1.24億円だった資産が、10ヶ月で68.2億円にまで増加しています。
10ヶ月で55倍!?すごい伸びてるね!
当ブログにも、2621で検索して訪問する方が多く、2621の注目の高さが伺えます
2621は日本から米国債への投資に最適!
運用開始から7ヶ月ほど経過し、資産が集まりつつありますね。
2021年2月以降は米国の株式市場が不安定になっていますから、
国債へ投資したいという需要が増加したのかもしれません。
さらに、2621は国内ETFなので、他のETFにはないメリットが多くあります。
- 為替手数料が不要
- 売買手数料が割安
- 貸株金利を受け取れる
為替手数料は不要、売買手数料無料
米国ETFはドルで買い付けるので、円からドルへの為替手数料が必要となります。
しかし国内ETFは円で買い付けますから当然為替手数料は不要です。
さらに、国内ETFは国内株式ですから、米国株式と比較して取引手数料は安い証券会社が多いですね。
楽天証券やSBI証券なら、2621の売買手数料は無料です
え、無料なの!?
貸株により、年間0.10%の貸株金利を受け取れる
長期的に保有し続ける場合、貸株を利用することができます。
貸株って?
貸株とは、自分が保有している株式を機関投資家等へ貸し出すことをいいます。
貸株のメリットは、貸株金利を受け取ることができること
貸株金利は銘柄ごとに設定されます。
貸株中も売買は自由で、配当や株主優待を受け取ることもできるので特にデメリットはありません。
ただし受け取る配当が「配当相当」となり、適用される税制が異なるなどの相違点があります。
詳しくは、ご利用の証券会社のWebページをご参照ください。
楽天証券の場合、2621の貸株金利は0.10%に設定されています。
毎年0.10%もらえるのね。
ってことは、実質的な経費は0.04%になるのかな
為替ヘッジつき
2621は為替ヘッジありなので、為替のリスクを緩和することができます。
急激な円高時にも資産の目減りを抑えることができますが、、、
為替ヘッジは円安のメリットも緩和してしまうので一概にいいとは言えないけど、リスクの低減には役立つね
2621は日本人が投資するのに最適なETF
ドルへの為替手数料が不要だし、楽天証券やSBI証券なら売買手数料無料!米国債投資するなら、検討の価値はありそうだね
管理経費も、貸株金利を差し引けば最安になるしね!
10ヶ月間のチャートを確認しよう
2621が運用開始した2020年10月からの期間で比較しましょう。
わかりやすくするために、S&P500も入れてあります。
黒:S&P500 赤:EDV 青:TLT 紫:SPTL 黄:VGLT 緑:2621
国債はどれもすごいマイナスだね
デュレーションの通り、EDVだけ大きな動きだよ
全体として見れば、金利が上昇する期間だったからね。
特に今回紹介している長期国債は、下がる時は大きく下がるんだよね
- 全ての長期国債ETFはマイナスリターン
- EDVは、特に大きく値下がりしている
- EDVを除く4銘柄は、ほぼ同じような値動きをしている
2020年初来でコロナショック暴落時の値動きを比較しよう
次に、2020年初来の株価チャートを確認しよう!
コロナショック前後の値動きを確認だね!
ここからは、2621以外の銘柄で比較していきます。
黒:S&P500 赤:EDV 青:TLT 紫:SPTL 黄:VGLT
おお!本当に株価と逆に動いてるね!
時期を区切って、注目のポイントを見ていこう
コロナショックの初期段階
株価が急激な下落を始めたコロナショックの初期段階では、
多くの長期国債は株とは逆に急激に上昇を始めていました。
コロナショック大底
株価下落中、長期国債は急激な上昇が続いていました。
ところが、3月中旬に入ると長期国債も大きく値下がりを始めます。
3月中旬に大きく値下がりはしましたが、年初来マイナスにはなりませんでした
そして株価の大底にあたる3月下旬、長期国債も同時に底打ちし株価と共に急激な回復が始まります。
S&P500がコロナ前高値を回復
8月になると、S&P500がコロナ前高値を回復し、市場に安心感が広がりました。
それとともに、長期国債は下落トレンド入り。
再び株式市場が不安定化する2021年3月まで、下落トレンドが続いていました。
10年チャートで比較しましょう
10年ほどのチャートで、長期的な値動きを比較しましょう。
黒:S&P500 赤:EDV 青:TLT 紫:SPTL 黄:VGLT
長期で見ても、EDVは他の3銘柄とはかなり違う値動きだね
TLTとVGLT・SPTLの間にも差が出てきているね。
長期になるほどデュレーションの僅かな差が値動きの違いに現れるよ
株価との相関性を長期で確認しよう
ここまで見てきて、例外はあるものの株と逆に動く傾向があることはわかりました。
実際に、相関係数を使って数値で確認をしてみましょう。
どの債券ETFも同じように動くので、今回は最も運用期間の長いTLTを、S&P500と比較します。
リーマンショック直前の時期から現在までの、
15年くらいの株価チャートをみてみよう
黒:S&P500 青:TLT
ほとんどの期間で、相関係数がマイナスになってるね
そうだね。しかも、-0.50を下回るような期間も多いね。
やっぱり、強い逆相関があるね
そして、大切なのは株価の暴落時に債券の値動きがどうなっているか、と言うことです。
債券投資は、株価暴落時のリスクヘッジのためですからね。
暴落時に株と一緒に下落したら意味がありません。
ということで、リーマンショックやコロナショックなど主な下落局面を青く塗りました。
どう?
青く塗った時期は、だいたい逆相関してるね!
債券投資のリスク
債券投資って安全なイメージだけど、ほんと?
値動きの幅が小さいって意味では、株より安全だね。
でも、債券投資にも2つのリスクがあるんだよ
金利が上昇すると、債券の価格が下がる
国債価格は、金利が上昇すると下がると言う関係があります。
チャートを見れば、一目瞭然ですね。
黒:米国10年債利回り 青:TLT
うわー!こんなに美しい逆相関は見たことないね!
なので、金利が上昇するということが債券投資にとっては大きなリスクとなります。
実際に、2020年8月以降、米長期国債の金利が急上昇し国債価格は大幅に下落しましたね。
黒:米国10年債利回り 青:TLT
小さく見えるけど、債券で▲15%はかなり大きい下落なんだよ
信用リスク
発行元がデフォルトした場合は、債券の価値がなくなります。
が、米国債であれば、まずそういったことは起こらないでしょうね。
新興国債や社債への投資には注意が必要です。
債券のリスクについては、以下の記事にまとめました。
米国の長期金利は、長期的に下がり続けています
米国10年債の利回り推移を確認しましょう。
1980年からの40年間の推移です。
1981年ごろをピークに、長期的に金利が下がり続けていることがわかります。
さらに、5年間のチャートを確認します。
2018年末をピークに下がる傾向にありましたが、コロナショックへの対応で一段と金利が下がっています。
金利が0.50%に近づき、これ以上の利下げは難しい状況で上昇に転じました
金利は、2020年8月の0.508%から、2021年3月に1.744%をつけるまで一気に急騰!
半年余りで300%の上昇です。
これだけ上がれば、債券価格は下落しますよね
3月から7月まで、金利は再び下落傾向に向い、債券価格も緩やかに回復していました。
8月以降は金利は緩やかに上昇しています。
債券は横ばいの値動きになっています。
黒:米国10年債利回り 青:TLT
まとめ
ということで、今回は米長期国債ETFの5銘柄を比較検討しました。
- iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)
- バンガード・超長期米国債ETF(EDV)
- バンガード・長期米国債ETF(VGLT)
- SPDR®ポートフォリオ米国長期国債ETF(SPTL)
- iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)(2621)
いずれも銘柄も株と逆方向に動いてくれるので、ヘッジとして投資する価値はあるでしょう。
基本的には同じようなものですが、銘柄によってほんの少しだけ特徴があります。
TLT
最も長い歴史があり総資産が圧倒的に多いが、分配金は低めで経費は高め。
値動きを見ると、同様の性格であるVGLTやSPTLよりもわずかにデュレーションが大きいため、
長期で見ると値動きがやや大きい傾向にあります。
毎月分配です。
EDV
デュレーションが24.5年と、他の4銘柄よりも明らかに大きいことが特徴。
そのため値動きは他より大きいです。
分配金はやや高めですが、配当頻度が年に4回となります。
VGLTとSPTL
今日登場したETFの中では、デュレーションが小さめの2銘柄。
いずれの項目も誤差程度の差しかなく、非常に似通っています。
いずれも毎月分配で、管理経費も非常に低く抑えられています。
2621
米国債ETFですが、日本市場へ上場しているETFです。
国内ETFということで、他にはない大きなメリットがあります。
- 為替ヘッジがついている
- 経費がTLTよりも安い
- 為替手数料不要
- 楽天証券やSBI証券なら売買手数料無料
- 貸株金利が受け取れる
など非常にメリットが多いETFです。
分配頻度は年4回です。
設定から10ヶ月が経過し、資産が集まりつつあります。
せーじんは、この中ではEDVに毎月積立投資しています。
値動きが大きいですが、暴落時のヘッジとしては申し分のない銘柄です。
せーじんのポートフォリオ
せーじんの資産状況と取引履歴を、毎月紹介しています。
ETF、レバレッジ投資信託、CFDのリターン比較実験
4月から、ETF・レバレッジ投資信託・CFDのリターン比較実験をしています。
毎月経過を報告していますので、ぜひご覧ください。
どれが一番儲かるのかな〜?
以上、【TLT/EDV/VGLT/SPTL/2621】暴落すると価値が上がる!攻撃的守備の長期米国債ETFを比較という話題でした。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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